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東京都内の中小河川や用水路、それらの暗渠、ひっそりと残る湧水や池をつれづれと辿り、東京の原風景の痕跡に想いをよせる。1997年開設の「東京の水」、2005年開設の「東京の水2005Revisited」に続く3度目の正直?新刊「東京「暗渠」散歩改訂版」重版出来!


by tokyoriver

六本木、麻布十番、元麻布の川跡(1)がま池からの流れ



六本木、麻布十番、元麻布の谷筋の水を集めて流れて古川(渋谷川)に注いでいた小川の痕跡を再訪してきました。東京の水2005revisitedで、5年前にすでに詳しく記事にしていますが、なかなか面白いエリアですので、最新の写真をメインに2005年の写真、1997年の写真も織り交ぜて、何度かに分け、再度紹介してみます。六本木のところは、先日ちょうどブラタモリ最終回でも取り上げられていました。
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まずは元麻布2丁目の「がま池」から流れ出していた小流を追ってみよう。

麻布十番から枝上に分かれる谷の一つに、有栖川宮記念公園の南側、谷頭の窪地には江戸時代より有名な「がま池」(「蝦蟇ケ池」)が残っている。「がま池」の名は、池に棲んでいた大きなガマガエルに由来するとされており、いくつか伝説が残っている。がま池の由来やその変遷については、こちらのサイトが詳しい。

明治時代の地図には、大きな池の姿が描かれている。この時点で池の広さは1600平方メートル。池の北側からは川が流れ出し、北側の谷へと続いている。

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「五千分の一東京図測量原図 東京府武蔵国麻布区永坂町及坂下町近傍(明治16年)」より

現在の池の姿は、googlemapの空中写真で確認できる。池の広さはおよそ600平米。池の北側が埋め立てられ、池の上にせり出すかたちでマンションが建っている。中島はおそらく明治の地図に描かれているのと同じものだ。どんな旱魃の時でもかれたことがないと言われた池の湧水も、1990年代に入るとほとんど枯渇してしまい、現在は、循環水で水面を維持しているようだ。
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大きい地図はこちら

現在、住宅街の道路端と、とあるマンションの玄関脇にがま池の説明版が掲示されているものの、先のマンションの中庭となっていて、入ることはおろか見ることもできない。マンション入り口の看板には池を公開している旨書かれているが、聞いてみたところ公開していないとの回答。5年前に訊いたときにも、一時的に取りやめているといっていたが・・・現在のマンションは2002年に建替えられたもの。その際は建設業者が池の公開を約束したというが、どうも有名無実になっているようだ。

池の周囲も住宅に囲まれていて、その姿を見ることは不可能だったのだが、数年前に池の南側の建物が取り壊されコインパーキングとなり、ここから木々の隙間越しに池を見下ろすことができるようになったのは割と知られている話。ちょっとお邪魔して眺めてみる。水面にはマンションが映っている。
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池の北側、かつて池からの小川が流れていた谷は、三方を崖に囲まれた小さく深い窪地となっている。再開発の手も今のところ入っておらず、小さな家屋が密集し、周囲から取り残された風景。谷の向こうに見える六本木ヒルズとは対照的だ。
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谷の東側の崖に沿う宮村児童遊園の一角には、わずかであるが崖の下から湧水が流れ出ていて、溝を伝って小さな水溜りのような池に注いでいる。
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公園から更に一段下がった谷底の住宅地には細い路地が何本か伸びている。一番奥の路地から公園の方向(東)を見ると、木造家屋の向こうに元麻布ヒルズが聳え立っている。手前の路上に見える雨水桝(?)には、右(北)側から湧水らしき澄んだ水が流れ込んでいる。
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写真奥、白い柵の向こう側から、蓋をされたU字溝がここまで延びている。先の公園の湧水とは別に、住宅地の裏側の崖から流れ出しているようだ。
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かつてがま池やこれらの谷に湧く水を集めて流れていた小川は、公園の西側に沿ってその痕跡を残している。路地の細さに比してマンホール径が大きい。
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未舗装の川跡は、道路を越えて更に北へ、舗装された路地となってのびている。
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人がすれ違えないくらいの細い路地の川跡。右側には崖が迫る。崖の上は高級マンションだ。
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水路端にポンプ式井戸をつぶした痕跡が残っていた。
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狸坂のたもとで川跡の路地は道路に出る。川はここで元麻布プレイスの谷筋から流れ出していた別の小川に合流し、麻布十番方面へと流れていっていた(時代によっては、合流せず平行して流れていたのかもしれない)。次回はそちらを取り上げよう。
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最後に狸坂の写真を。人を化かす狸が出没したことがその由来という、そのままの名前の坂だが、ごらんの通りかなりの急坂。坂の下の標高13mに対し坂の上は26m。がま池の谷の深さがわかる。
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Commented by lotus62 at 2010-03-17 12:24 x
がま池は、はなから見られないものと諦めていたので朗報でした!このあたり、すごく複雑な地形なので興味があったのですが、やはりしっとりした暗渠があるのですねー。
Commented by nama at 2010-03-17 12:39 x
ううー、すごいですね!ガマ池はブラタモで初めて知り興味を持ちましたが、むしろ今回の記事後半の暗渠写真のすごいこと!狭くてとっても素敵です。六本木ヒルズとか行ってる場合じゃありませんねぇ。
Commented by tokyoriver at 2010-03-18 00:11
lotus62さん。
ほんとうは、当初の約束通りに正式に見学させてもらえるといいんですけどね。
Commented by tokyoriver at 2010-03-18 00:16
namaさん。
ここの暗渠というか川跡は、こんなに細いのによくぞ残っていたという感じです。
Commented by 庵魚堂 at 2010-03-18 20:51 x
がま池の存続がかなり危うくなっている(と報じられた)時期に、この界隈には何度か通いました。
当時の写真を見直してみましたら、HONDAさんとほぼ同じアングルで撮った写真が三枚。立ち位置がほぼ同じもの含めたら五枚になりました。
小さなエリアとはいえ、尋常ではない重なりようですね(笑)
Commented by tokyoriver at 2010-03-18 23:04
庵魚堂さん。
あれまあ。おんなじアングルなのは、暗渠好きの見るポイントが同じなのか、それとも狭い場所なのでアングルが限られているためか・・・いずれにしてもちょっと嬉しい感じがします。
Commented by うさぎねこ at 2010-09-20 22:34 x
こんばんは。
少し前の記事ですが、コメントさせていただきますね。

庵魚堂さんのblogで、がま池がなくなったような話が出ていたので、今日ふたりで確認してきました。そうしたら、まだちゃんと残っていました。(^-^;
そんなわけで、ちょっと安心したのですが、気のせいか、水が増えていたように思えました。
Commented by tokyoriver at 2010-09-20 23:12
うさぎねこさん。
がま池、周囲から見える場所が限られているせいか、なくなったと記してある書物もけっこうありますね。ともかく無事でなによりです。
by tokyoriver | 2010-03-17 00:24 | 渋谷川とその支流 | Comments(8)