落合川を辿る(2)川を支える旧流路たち
2010年 10月 25日
このエリアにあまり馴染みのない方も多いと思われるので、流域の全体図をgoogle mapのキャプチャから(画面のはめ込みができないので、実際のプロット図はこちらのリンク先を)。画面の下方を横切る濃い青で描いたラインが落合川だ。地図左下が源流で、右上で落合川に合流している。ところどころはみ出ているのが改修前の旧流路で、そのいくつかは今回とりあげる。支流には立野川、南沢湧水群からの流れ、こぶし沢の流れ、そして全区間暗渠化されているが、東久留米駅の北側に発する弁天川がある。図左下がかつて接続されていた玉川上水大沼田分水の末流で、現在は小平排水溝として、黒目川の支流である揚柳川(全区間暗渠)に接続されている。
では、さっそく前回の続きから。下の写真は上流端の標識から少し進んだ地点で、右上に上流端の橋が見える。わずかな区間でしっかりと川らしくなっていることがわかる。
川はあちこちから湧き出る水を集め、どんどん水量を増して行く。下の写真では左下の湿地のようなところから湧水が流れ出し、右岸の石垣の隙間からは水が音をたてて湧き出していた。
少し下ると、流路は整備された本流の河川敷からいったん外に出て、整備前の旧流路を流れる。この区間は1992年に流路が整備された際に、絶滅危惧種であるホトケドジョウが生息しており湧水地点も多い区間であることから、残されたという。川は洪水などのときだけ、河川敷内を流れるようになっている。先の写真から数十メートルしか進んでいないが流量が格段に増していて、流れも早い。
その本流の方の河川敷には地面にこんな穴があき、中を湧水が勢いよく流れている箇所があった。
流れ出た先は、本流の河川敷の真ん中に設けられた池。昨年の初夏に訪れた際は、下の写真左側のように涸れていたのだが、今回は右側写真の石の下から音をたてて流れ出し、いったん池に溜まった後、下流へと流れ出している。
旧流路が本流の池からの流れと合流した後の、落合川の姿。上流端からわずか200メートル余りで、もうこの姿だ。不必要ともいえるほどの過剰な改修工事によって、最上流部の湧水量は激減したというが、それでも季節によってはこの水量があるというのは、水源が涸れて汲み上げに頼っているような都区内の川から考えると驚異的だ。護岸の下でもあちこちから水が湧き出しているのが見える。
この先も、再び本流から旧水路が分かれている。下の写真の左側は昨年初夏の状況。まだ本流は完成しておらず、コンクリートの梁を渡した典型的な水路だったのが、今回は石を積み整備された水路に変わっている。湧水の存在などで流路を残したのだろうか。護岸は無骨だが水路自体は自然に近い状態だった以前の水路のほうが、水中の環境はよさそうに思えるのだが・・・
この旧水路に架かっていた弁天橋。素朴な意匠の欄干が印象的だったが、今回は跡形もなく消え去っていた。奥に、改修後の新水路にかけ直された弁天橋が見える。
弁天橋の下流側も、コンクリートの垂直な護岸に挟まれてはいるものの、水路自体は草の生い茂る自然な姿だったのだが、こちらは暗渠化されてしまった。わざわざこの区間だけ暗渠にする意味がよくわからない。
弁天橋の下流側。
右岸(南)側には、弁天フィッシングセンターの池があり、ここの水(井戸水と湧水らしい)も落合川に流れ込んでいる。つい2、3年ほど前まではこの4倍くらいの広さの池だったが、道路の造成でつぶされてしまった。
しばらく下ったところに架かる地蔵橋から上流を振り返る。写真中央左寄りの護岸の切れているところと、中央右端の川が曲がっているところでかなりの湧水が湧き出しているのが見えた。流路は一見自然に見えるが、実際には改修された流路で、本来は奥の草の生える斜面のところを流れていた。現在見える斜面は、改修工事で出た土で旧流路を埋め立ててつくられたものだ。
2007年に実行されたこの改修工事は大きな問題となった。旧流路は渓谷風の景観と、7カ所ほどの湧水地点からあわせて1日三千から六千トンの湧水量を誇る、落合川上流部の最大の水源地だった。そして、そこには絶滅危惧種であるホトケドジョウが千匹近くも生息していたのだ。ほかにもカワセミが棲息し貴重な水草が繁殖するなど、豊かな自然を残す旧流路の保全を求める住民運動が起こったが、埋め立ては強行され、ドジョウたちは「避難」させられた(しかし、そのほとんどは結局死んでしまったという)。最終的には下流の一部は埋め立てられずに整備されて残されたものの、湧水は減少し、もとの環境も戻っていないという。そして落合川とホトケドジョウを原告とした裁判が起こされている。
反対運動は改修自体を否定するものではなく、旧流路を残してほしいというものだったようだし(現に落合川各所には旧流路が残されている)、1997年の河川法改正で、河川行政が環境を保全する方向へと舵を切った後でのこの工事、なぜ強行されてしまったのだろうか。
「落合川に澄んでいる魚と見られる野鳥たち」の看板。先の経緯を知ってから見ると、複雑な気分だ。
残された旧流路。流れる水は清冽だが、その姿は渓谷とはほど遠い。
埋め立てられた区間の地下から湧き出た水が暗渠から流れ出ている。かなりの流量だが、これでもかつての水量の半分以下だという。
澄んだ水の中を沢山の魚が群れをなして泳いでいる。新たな自然が根付くことになるのだろうか。
旧流路は40mほどで、落合川本流に合流している。合流地点にも魚が群れていて、水質のよさを伺わせた。
合流後の落合川。上流端の標識からは約700m下ってきた。このあたりは水面に近づくことが出来る。
この少し先では右岸側から「ひょうたん池」からの湧水が合流し、その先では再び旧水路が分かれる(こちらは無茶な改修や埋め立てをされることなく、そのまま残されている)が、写真の枚数も多くなったので以下は次回としよう。
はじめのほうの上流写真はもう眺めているだけでわくわくしますね!都心からも近いしここはぜひ行ってみたいです。っつかできることなら沢に入って遊んでみたいですw
改修工事は最近の話なのですね。ドジョウの話といい、無念さを感じるようです。・・・まだ、ここらへんの土地の事情がよくわかっていませんが。でも実は自分、東久留米もゴニョゴニョな縁があって、一時期頻繁に行っていました。地図で見る限り、前沢宿の近くのような。・・・ってこの川、すぐ近くですねw
ぜひぜひ行ってみて下さい。次回かその次くらいに書くつもりですが、もう少し下流に行くと、夏には小学生が川で泳いでたりします。ほんとに綺麗です。
穴の中の湧水、危うく足を突っ込むとこでした。改修工事は20年以上前にはじまり、今回とりあげた弁天橋前後のあたりが最後の区間だったようです。そして弁天橋の少し先がまさに、前沢宿のバス停です。各地にゴニョゴニョな縁がありますねw
いつも見てます。地元の川なのですが、行ったこと無いところなどがあってびっくりです。次回も楽しみにしていますー!
長寿池はもしかして立野川の合流地点の近くにある池のことでしょうかね。南沢湧水地の水なら飲んでも大丈夫そうな雰囲気です。
ほんとうに小学生が川に入って遊んでいたので、帰宅後改めてこちらのブログを再読してびっくりしてしまいまいたw
川で遊べるなんて、いい環境ですよね。水がきれいだからこそできるし、行政が安全を重視するあまり禁止にしたりしていないのもいいです。